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COLUMN美容コラム

解析!ビタミンCとビタミンC誘導体ってどう違うの?

今回は、万能美肌成分として人気のビタミンCについてご説明しましょう。ビタミンCといえば、抗酸化、コラーゲンの産生促進、美白(チロシナーゼ活性阻害・メラニンの還元)、皮脂分泌抑制、毛穴引き締めなど様々な働きがあります。そこで、知っているようで知らなかった!という情報を満載でご紹介していきますので、この機会にぜひお読みくださいね。

1.ビタミンCの働きと上手な摂取の仕方は?

 ビタミンC(=アスコルビン酸)は、イチゴ、柑橘類、赤ピーマンなどに豊富に含まれています。ビタミンCはコラーゲンの合成に必要不可欠。コラーゲンは皮膚や腱、軟骨などの結合組織を構成するタンパク質なので、ビタミンCは身体にとって欠かすことができない栄養素といえます。ヒトは体内でビタミンCを合成することができないため、毎日、外から摂取するしかありません。けれども、ビタミンCは壊れやすく、体内で代謝が非常に早く行われてすぐに損失してしまうという特徴があるので、1日に十分なビタミンCを摂取するためには、「ビタミンCを体内で“きらさない”こと」が大切。つまり、ドカッと一気に摂取するのではなく、1日3回にわけて、1000mgくらい摂取する、などがおすすめです。

 しかし、ビタミンCは身体のあらゆるところに必要なビタミンのため、ほとんどが内臓や脳に使われてしまいます。皮膚は面積が広いため、経口摂取だけでは皮膚にビタミンCを十分な量を届けることができないのです。ビタミンCは肌にも直接塗布するのが、美肌にとって大切です。

2.ビタミンC誘導体ってビタミンCとはどう違うの? 

ピュアビタミンC※1は、角質層のバリアを通過することができず、皮膚に浸透できません。また、不安定なため、光や熱だけでなく空気に触れるだけで簡単に酸化してしまうため(黄色や褐色に変色したものがそうです)、効果が損失してしまいやすいのです。効果がないばかりか、酸化物となって肌へ悪影響を及ぼす可能性もあります。

そこで、ピュアビタミンCに、水になじむもの、脂になじむもの、といった“しっぽ”のようなものをくっつけて(=化学修飾させて)、安定化させ※2、皮膚浸透性を上げて、効果的にお肌に作用するようにしたものが「ビタミンC誘導体」です。ほとんどのビタミンC誘導体は、皮膚の中で、酵素によって分解されて(しっぽの結合がとれて)、ビタミンCに変換され、効果を発揮します。

※1特殊な技術を使用しない、原料としてのビタミンC(アスコルビン酸)のこと
※2ビタミンC誘導体の種類により安定性は異なります

3.ビタミンC誘導体の種類を解説しましょう!

代表的なビタミンC誘導体は下記になります。成分の特徴などを細かくまとめましたので、化粧品の全成分を見る際のご参考に、ぜひ辞書としてお使いください!

■アスコルビルリン酸Na (略称:APS)
医薬部外品名称:リン酸L-アスコルビルナトリウム

水溶性。安定性が高く、短時間で角質層に浸透してビタミンCに変換されるため即効性がある、最もポピュラーなビタミンC誘導体。医薬部外品の主剤としても配合可能。ニキビの予防や改善効果が期待できるため、クリニックで最もよく処方されているビタミンC誘導体でもあります。UVによる皮膚ダメージの改善、皮脂分泌の抑制、コラーゲンの生成の促進などが期待できます。ただし、高濃度では刺激や乾燥が高まるため、敏感肌や乾燥肌の方は注意が必要です。

リン酸アスコルビルMg (略称:APM)
医薬部外品名称:リン酸L-アスコルビルマグネシウム

水溶性。APSと同様、安定性が高く、短時間で角質層に浸透してビタミンCに変換されるため即効性がある、最もポピュラーなビタミンC誘導体の一つ。UVによる皮膚ダメージ改善や炎症からの保護、活性酸素の除去、コラーゲン産生の促進作用が期待されています。APSとAPMの違いは水への溶けやすさ。APMは若干水に溶けにくいため、クリームなどに配合され、化粧水にはAPMよりも水に溶けやすいAPSが配合されるのが一般的です。ただし、APSと同様に、高濃度では刺激と乾燥が高まるため、敏感肌や乾燥肌の方は肌に合うかどうかを試してみることが必要です。

■アスコルビルグルコシド (略称:AA2G)
医薬部外品名称:L-アスコルビン酸2-グルコシド

水溶性。アスコルビン酸(ビタミンC)にグルコース(ブドウ糖)がくっついたビタミンC誘導体です。熱にも光にも強く、安定性が高いのが特徴。ビタミンC誘導体が皮膚内でビタミンCへ変換されるには、酵素によって分解されることが必要ですが、ヒトの皮膚表層には、グルコシドを分解する酵素(α-グルコシダーゼ)がほとんどないため、アスコルビルグルコシドが皮膚上でビタミンCへ変換することは難しいと考えられていますが、一部の水酸基にはグルコースがついておらず、そのままの形でメラニン還元(メラニンを淡色化)作用が確認されており、きちんと美白効果を有しています。ただし、即効性、浸透性にやや欠けるのと、非常に高濃度配合しないとなかなか効果を実感できないデメリットがあります。

■テトラヘキシルデカン酸アスコルビル (略称:VC-IP)
医薬部外品名称:テトラ2-へキシルデカン酸アスコルビル

油溶性。ビタミンCの4つ(=テトラ)の水酸基すべてに、イソパルミチン酸という脂肪酸を結合させたビタミンC誘導体。安定性が非常に高く、油溶性のために経皮吸収性に優れています(皮膚は水をはじく性質があるため、油溶性のほうがなじみやすい)。しかし、皮膚内のエステラーゼという酵素によって、ビタミンCと脂肪酸に分解されるまで時間がかかるために、「遅効型のビタミンC誘導体」といわれています。保湿性が高いしっとりタイプであることも特徴。ビタミンC含有量が16%と低く、イソパルミチン酸が刺激性の低い脂肪酸であるため、刺激性がほぼなく、ビタミンC初心者の方や、敏感肌・乾燥肌の方におすすめのビタミンC誘導体です。
油溶性なので毛穴を介してニキビ発生部位である脂腺系への吸収性に優れています。ニキビ炎症部位で発生する過剰な活性酸素種を消去して、炎症やニキビ跡の色素沈着を改善する効果が期待できます。ただし、あまり高濃度で配合すると、VC-IPが分解されて生じる過剰な遊離脂肪酸が逆に炎症を引き起こす懸念もあるため、1~2%程度が理想と個人的には考えています。

■パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na (略称:APPS)

水溶性と油溶性の両方の性質を持っている両親媒性(りょうしんばいせい)のため※、浸透性が高く、イオン導入しなくても真皮までビタミンCが到達するといわれています。また、刺激が少なく、乾燥しにくいことが特徴です。真皮内での作用が期待できるため、抗シワ作用が期待できます。しかし、APPSはビタミンC誘導体の中でも安定性が悪く、逆に酸化物となって問題が生じる可能性があります。水ベースの化粧水などではパルミチン酸が遊離しやすいため、更に安定性が悪くなる傾向に…。
ビタミンCはレモン色を想起している方が多いのですが、実は無色透明です。黄色は酸化していること示しています。黄色くなっている製品は使用しないほうが良いでしょう。個人的には、APPSは粉末タイプのものを毎回混ぜて使うのがおすすめです。
※水溶性ビタミンC誘導体(リン酸型アスコルビン酸)に、「パルミチン酸」という脂肪酸が結合したビタミンC誘導体。この構造がヒトの細胞膜の「リン脂質構造」と非常に近い構造のため、浸透が良くなっていると考えられています。

■カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸 (略称:GOVC)

水溶性と油溶性の両方の性質を持っている両親媒性。ビタミンCに水溶性のグリセリンと、油溶性のオクタノールを結合させることで、不安定な両親媒性ビタミンC誘導体を安定化させています。 グリセリンによる保湿効果があるため、乾燥感やつっぱり感の軽減が期待できます。また、オクタノール基による抗菌効果があり、ニキビの原因菌のアクネ菌に高い抗菌性を発揮します。クリニック(なぜか女医さんに多い)がよく使用しているビタミンC誘導体です。

■「アミトース」シリーズ

ビタミンCにグリセリンを結合させた、保湿型ビタミンC誘導体。
6つの種類があり、それぞれ特性があります。

<ベーシックタイプ>
・グリセリルアスコルビン酸 (略称:アミトース2GA)
水溶性。シリーズの中で最も安価。粉体と相性が良い。
・3-グリセリルアスコルビン酸 (略称:アミトース3GA)
水溶性。比較的安価なため、高配合しやすい。安定性が高い。
・ビスグリセリルアスコルビン酸 (略称:アミトースDGA)
水溶性。ジェルやクリームに最適。角層バリア機能を強化。

<高機能タイプ>
・ヘキシル-3グリセリルアスコルビン酸 (略称:アミトースHGA)
水溶性。優れた美白効果を有し、メラノサイトのオートファジー活性化、メラニン輸送阻害などが期待できる珍しいビタミンC誘導体。
・ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸 (略称:アミトースMGA)
両親媒性。アクネ菌への抗菌作用により、光毒性物質ポルフィリンを減少。抗男性ホルモン作用も。毛穴ケアに最適。
・3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸 (略称:アミトース3LGA)
両親媒性。ビタミンCの1000倍もの抗酸化効果。細胞内抗酸化システムを活性化させ、グルタチオンを産生促進。セラミド産生促進効果も。

■アスコルビルメチルカルボニルペンタペプチド (略称:ペンタイド-C)

ビタミンCに、ドラックデリバリー等の分野で研究が進んでいる細胞膜を透過させるペプチド(CRP:cell penetrating peptides)を結合させたビタミンC誘導体。「浸透型ペプチドビタミンC誘導体」ともいわれています。通常のビタミンCのように受容体(アスコルビン酸トランスポーター:SLC23、GLUT)を介さなくても細胞内に運びこむため、非常に低濃度で効果を発揮します。今年発売されたばかりの原料のため、まだ実績がほぼなく、実際の製品での安定性、効果実感は「これから」といったところです。

■3-O-エチルアスコルビン酸 (略称:VCエチル)
医薬部外品名称:3-O-エチルアスコルビン酸

開発者の咲丘が最も評価する、「推し」のビタミンC誘導体です。
長くなりましたので、次回に続く。

※本記事はビタミンCとビタミンC誘導体に関する一般的な知見に基づいた記述と、咲丘個人の感想も含むものであり、製品の効果を保証するものではありません。

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